勝又壽良のワールドビュー 2024年10月13日
中国経済の最前線は、「不況一色」である。9月の消費者物価はかろうじて前年比でプラスを維持したが、生産者物価は24ヶ月連続マイナスというドロ沼状態にある。
中国国家統計局が13日発表した9月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比0.4%上昇。変動の激しい食品・燃料価格を除いたコアCPIは0.1%上昇した。一方、9月の生産者物価指数(PPI)は、前年同月比2.8%低下。これで24ヶ月連続の前年割れとなった。消費者物価上昇は、豚肉価格の上昇という特殊要因である。生産者物価下落は、過剰生産の結果だ。政府の補助金で無理矢理、生産しているのが理由である。これが、回り回って中国経済のデフレ基調を強めている。目先の利益を求めて、足下を崩すという振る舞いである。タコが自分の足を食っていると同じ状況にある。
こういうなかで、日本企業のレストラン業サイゼリヤが、中国不況を逆手にとって業績を伸している。低価格路線の追求である。
『日本経済新聞 電子版』(10月9日付)は、「サイゼリヤが最高益 貫いた低価格 倹約中国でも稼ぐ」と題する記事を掲載した。
サイゼリヤが、中国を中心とするアジアで快走している。2024年8月期連結決算は純利益が前の期比58%増の81億円と大きく伸び過去最高となった。けん引役は中国。倹約志向が強まる中で低価格メニューが人気で地域別売上高では上海や北京などが2〜3割伸びた。物価高では逆張りとも言える強みの低価格戦略を磨き国内外の出店を加速する。
(1)「9日午後、東京都内で開いた決算記者会見で松谷秀治社長は、「中国事業の営業利益は大きく伸びており今後も成長する。今期は出店をさらに増やしていく」。手応えをこう語った。24年8月期の売上高は23%増の2245億円、営業利益も2倍の148億円と好調で14年ぶりに過去最高益を更新した」
不況下の中国で稼いでいる日本企業が存在する。売上・利益とも過去最高という実績だ。サイゼリヤは、日本でバブル後の景気悪化のなか低価格を売りに急成長した。その成功体験を、今度は中国へ持ち込み再現している。
(2)「中国が、稼ぎ頭として存在感を高めている。中国を中心となるアジア事業の営業利益は、前の期比38%増の116億円と営業利益全体のうち約8割を占めた。松谷社長はかねて「中国は一部で日本のバブル崩壊後のような状況がみられる。低価格が受けて既存店が伸びている」と強調する。中国でも、日本同様に単純値上げを実施していない。広州の店では「ミラノ風ドリア」が18元(約380円)と地場をはじめとする同業他社の外食チェーンに比べると低価格を維持しており、客数増につながっている」
中国で低価格路線が成功しているのは、価格以上の付加価値を付けているからだろう。「お値段以上のお値打ち」である。
(3)「弾みが付いた中国で、さらなる開拓に向けて投資も増やす。ソースやパスタ、ピザなどを製造する中国子会社「広州サイゼリヤ食品」が約3000万ドル(40億円強)を投じて中国・広州に新工場を建設する。すでに着工しており、26年1月の本格稼働を目指す。松谷社長は「(現状約500店の)中国1000店舗を見据えた新工場だ。工場で仕込み作業をすることで店の生産性は上がる」と狙いを話した。広州新工場を通じて商品を安定供給しながら原価も下げる考えで、バブル後の景気悪化のなか低価格を売りに日本で急成長した成功体験を中国でも再現する」
セントラルキッチンで集中して生産する。それを各店舗で温めて提供するという、日本で成功したスタイルの踏襲である。冷凍技術を利用すれば、コスト切下げと最高の味を提供できる両建てシステムだ。かつて、日本でも話題になった手法である。「広州新工場を通じて商品を安定供給しながら原価も下げる」とは、セントラルキッチンを意味している。