2018年10月09日

各国の哨戒機が日本で大集合、理由は「瀬取り」 対潜水艦戦闘用の航空機がなぜ?

乗りものニュース / 2018年10月8日 7時10分

2018年9月、実は日本へ数か国の対潜哨戒機がぞくぞくと集結してきていました。わざわざ海を越えてやってきた理由は北朝鮮による「瀬取り」の監視ですが、なぜ対潜水艦戦闘用の航空機が、洋上の監視にあてがわれたのでしょうか。

各国のP-3が日本に大集結

 防衛省は2018年9月、沖縄県の嘉手納基地にオーストラリア、ニュージーランド、カナダがそれぞれ対潜哨戒機を一時的に派遣してくることを発表しました。派遣されてくるのは、オーストラリア空軍からAP-3C、ニュージーランド空軍からP-3K2、カナダ空軍からCP-140です。

 一見、それぞれ違う機種の対潜哨戒機を派遣してくるように思えますが、実はこれらの機体は全てアメリカのロッキード(当時。現ロッキード・マーチン)が開発した対潜哨戒機P-3「オライオン」をベースとする機体です。P-3は、1960年代にアメリカ海軍での運用が開始されて以来、全世界で採用されているまさにベストセラー対潜哨戒機で、日本でも海上自衛隊がP-3Cという名称で運用しています。つまり、今回沖縄の嘉手納基地には各国のP-3、言い換えればP-3一家の親戚同士が一堂に会するということになります。

 しかし、ひと口に日本へ航空機を派遣するといっても、日本とオーストラリア、ニュージーランド、カナダとの距離はそれぞれ非常に離れています。たとえば、この3か国のなかで日本との距離が最も離れているニュージーランドからだと、日本までおよそ9000kmにもなります。では、そこまでの道のりを飛び越えてまで今回こうして各国の対潜哨戒機が日本に集結する理由とは、いったいなんでしょうか。それは、北朝鮮が行っている洋上での違法な物資のやり取りである「瀬取り」の監視や取り締まりを行うためです。

 現在国際社会は、北朝鮮による核開発や弾道ミサイルの開発をやめさせるために、国際連合(国連)による制裁措置を通じて経済的な圧力をかけています。いくら北朝鮮が核兵器や弾道ミサイルを開発しようとしても、資材や資金がなければこれを継続することができず、また制裁によって北朝鮮の経済情況を悪化させることにより、こうした地域の平和や安定を損なう核兵器や弾道ミサイルの開発をやめさせよう。というのがこの制裁措置の主旨です。

 しかし、北朝鮮はこの制裁措置に抜け穴を設けるべく、様々な手段を講じています。そのひとつが、他国の船と洋上で物資をこっそりやり取りすることで、制裁措置によって輸入することができない石油などを手に入れる「瀬取り」とよばれる行為なのです。

瀬取り監視に対潜哨戒機が必要なワケ

 こうした瀬取りなどの抜け穴をふさがなければ、いくら国際社会が制裁措置を行っても、その意義が薄れてしまうことになり、結果として北朝鮮の核兵器開発などをやめさせることが難しくなってしまいます。そのため、各国が協力して瀬取りの監視を行うべく、日本に対潜哨戒機を派遣してくるというわけです。

 ちなみに、今回航空機を派遣する3か国のうち、オーストラリアとカナダは2018年の4月にも今回と同様の目的で対潜哨戒機(オーストラリアがP-8、カナダがCP-140)を日本に派遣した実績があります。

 では、今回各国が瀬取り監視を行うツールとして対潜哨戒機を選んだのは、いったいどのような理由からなのでしょうか。

 瀬取りの取り締まりといっても、広大な日本海や東シナ海において「いつ、どこで」行われるか分からない瀬取りを監視するというのは、非常に難しい作業です。たとえば、船舶による監視では目視で確認することができる範囲に限界があり、ヘリコプターでは上空から監視できることで船舶よりもカバー範囲を広げられる反面、燃費の悪さに起因する航続距離の制限がかかってしまい、進出できる距離や監視を行える時間に限界があります。そこで、対潜哨戒機の出番です。

日本にとっての意義は?

 対潜哨戒機は、海の中に潜む潜水艦を見つけ出すことを主な任務とする航空機で、そのため陸上の基地から遠い洋上に進出して、かつそこで潜水艦を探し出すために何時間も滞空することができます。これは、瀬取り監視において、上空から非常に広大な範囲をレーダーやカメラといったセンサーで監視しつつ、何時間もこうした活動を継続することができるということを意味します。つまり、対潜哨戒機ならば、「いつ、どこで」行われるか分からない瀬取りを、効果的に監視することができるわけです。

 それでは、こうした各国による対潜哨戒機の派遣は、日本にとってどのような意義を持つのでしょうか。

 南北首脳会談や米朝首脳会談など、2018年に入ってこのかた大きな動きを見せつつある北朝鮮情勢ですが、今回の各国による対潜哨戒機の派遣が示唆するように、まだまだ情況が好転したとは言えません。そのような状況下で、国際社会による北朝鮮への経済制裁の実効性を確保するために各国が行う瀬取り監視といった措置の中心拠点、いわばハブとして日本が機能しているということが、今回の対潜哨戒機派遣から言えるでしょう。

 つまり、北朝鮮に対する国際社会の取り組みに関して、日本が重要な役割を果たせているということが、今回の派遣から筆者(稲葉義泰:軍事ライター)が感じた日本にとっての意義です。これは、昨今日本が北朝鮮をめぐる情勢の変化に取り残されているという意見も見られるなかで、非常に重要な意義といえるでしょう。
posted by beetle at 07:56| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする