2017年02月04日

中国、「バブル決壊」16年の税収伸び率急低下で「赤信号」

勝又壽良の経済時評 2017-02-04 05:00:00

    いずれ国防費にも事欠く事態へ突入する

秘密主義の中国であるが、すべてを隠しきれるものではない。断片的に流れてくる情報をつなぎ合わせると、中国財政は「火の車」になっていることが判明した。16年の歳入伸び率は前年比で4.50%へと落ち込んでいた。15年の増収率が8.45%であるから、ほぼその半分強にまで落ち込んでいる。この原因は、言わずと知れたバブル「決壊」である。過剰債務という「ダム」でせき止められていた病原菌が、中国企業全体に広がり衰弱させている。税金を納めるほどの利益の上がらない、「ゾンビ企業」が急増しているのだ。

中国は、GDP統計を操作できても、「キャッシュ」という税収で捉えてみると、逃げ隠れできるはずがい。この税収は、長期にわたって眺めると、明らかに大きな特色が浮かび上がってくる。税収の伸び率と、名目GDP増加率から弾き出される「税収弾性値」が、驚くなかれ、中国経済の「突然死」を予告する事態である。次に、そのデータを示すが、今後の人口高齢化と国防費増加を勘案すると、中国財政はパンクの憂き目に合う公算が大きい。もはや、「大言壮語」を言えるゆとりはなくなった。後は、愚痴と後悔の連発であろう。

中国の税収伸び率と税収弾性値(勝又試算)
      税収伸び率   税収弾性値   (非税収入率)
2001  22.3%    2.10    6.6%
  02  15.4%    1.55    6.7%
  03  14.9%    1.13    7.8%
  04  21.6%    1.22    8.5%
  05  19.9%    1.22    9.1%
  06  22.5%    1.33    9.9%
  07  32.4%    1.42   11.1%
  08  19.5%    1.09   11.6%
  09  11.7%    1.25   13.1%
  10  21.3%    1.22   11.9%
  11  25.0%    1.36   13.6%
  12  12.9%    1.14   14.2%
  13  10.1%    0.99   14.4%
  14   8.6%    0.99   15.1%
  15   8.4%    0.91   18.0%
  16   4.5%    0.56

中国財政は、中央財政と地方財政の二本立てになっているが、ここでのデータは、両方を合計したものだ。表記の通り、「非税収入」項目が歳入に入っている。この項目についての説明はないが、地方政府の「土地売却益」かと思われる。15年では税収全体の18.0%と2割弱にも達している。中国が、土地を「打ち出の小槌」に使ってきた事情から見ると、その可能性を否定できない。

先ず、税収の伸び率の推移を見ていただきたい、リーマンショックの08年ですら19.5%、翌年の9年は11.7%に鈍化したが、10〜11年はバブル景気を反映して、20%を上回る絶好調ぶりである。12年以降はバブル決壊の影響で企業利益悪化を反映、税収の伸び率は「釣瓶落とし」の状態に落ち込んできた。企業が過剰債務を抱えて「ゾンビ化」するに伴い、もはや税金を払えるような状態でなくなったのだ。

税収弾性値とは、経済成長によって税収がどの程度増えるかを示す値である。GDPが1%変化し、税収も1%変化すれば所得弾性値は1になる。計算式は、「税収増加率÷名目GDP増加率」で現す。税収弾性値が高い水準であれば、経済成長率を上回る税収増加率が実現する点で、財政は好循環過程にある。一般に、経済成長率が高ければ税収弾性値も高いという相関関係が見られる。事実、中国は、2001〜12年までの二桁成長率(名目)の経済で、税収弾性値は1を上回っている。

2012年以降では、過剰債務=過剰設備=過剰生産の重圧が、企業活動を直撃している。当然、企業収益は低下して行く。満足に税金も納められない経営状況(多くはゾンビ化する)に落ち込めば、名目GDPは増えても税収が増えるわけがない。ここに税収弾性値は1を割り込むのだ。

2013年以降、税収弾性値は1を割ってきた。そして、16年はついに0.56という危機的状況に落ち込んだ。この状態が一時で終わり、すぐに元の状態に回復できる見通しがあるだろうか。私がこれまで繰り返し指摘してきたように、中国経済は過剰債務の整理に未着手状態だ。逆に、債務を増やしてゾンビ企業の延命化を図っているほどである。よって、税収の伸び率はさらに鈍化するのは不可避であろう。税収弾性値は一層低下するに違いない。

以上は、データ分析によって、重篤に陥っている中国経済診断書の「一般的な所見」を書いてきた。次は、個別の症状を見ていきたい。

『人民網』(1月27日付)は、「国有企業、16年の経済運営状況は緩やかに好転」と題する、「大本営発表」を行った。

(1)「2016年は、国有企業・国有持株企業(国有企業と総称)の経済運営状況が緩やかに好転し、収入と利益は引き続き安定増加傾向を保ち、収入の増加率は拡大したが、利益の増加率はやや縮小した。鉄鋼、化学工業、有色金属などの産業が損失を計上した。16年の国有企業全体の営業収入は、45兆8978億元(1元は約16.7円)に上り、前年比2.6%増加した。そのうち、中央企業(中央政府直属の国有企業)は27兆6783億元で同2%増加。地方政府の管轄下にある国有企業は、18兆2194億元で同3.5%増加した。国有企業の利益は2兆3157億元で同1.7%増加し、そのうち中央企業は4.7%減少し、地方政府管轄下の国有企業の利益は16.9%増加した」。

私が中国当局の発表を信頼しない理由は、この記事にすべて現れている。16年の国有企業全体の売上高が前年比2.6%増だが、利益は同1.7%増である。この程度の「微増」で「緩やかに好転」と言えるだろうか。政府直轄の中央企業は同4.7%減益であるからだ。もっと突っ込んで言えば、人件費アップによって損益分岐点は上がっているはずだ。2.6%の増収で1.7%の増益は不可能に違いない。この数字自体もまやかしであろう。

地方政府管轄下の国有企業は16.9%の増益でも、中味がすこぶる怪しいのだ。地方の国有企業は、土地値上がりという「あぶく銭」に関わっている。そうでなければ、中央企業が減益であることと整合的な説明が不可能である。もう一つ、地方の国有企業が増益になった理由は、過剰設備の棄却を故意に遅らせ、突然の市況回復の恩恵に浴したという面もあり得る。要するに、正常な決算ではない。

『ロイター』(1月27日付)は、「中国国有企業、2016年は1.7%増益、負債10%増」と題して、前記の『人民網』記事への「反証」となるデータを伝えた。

(2)「中国財政省は26日、2016年の国有企業の利益が前年同期比1.7%増の2兆3000億元(3342億4000万ドル)だったと発表した。1〜11月は2.8%増だった。2016年の売上高は2.6%増の45兆9000億元。12月末時点の負債総額は前年比10%増の87兆元だった」。

この簡単な記事の中に、中国国有企業の置かれている厳しい状況が把握できる。利益は1〜11月までは2.8%増であったが、通年では1.7%増に止まったことだ。それは昨年12月の景況が急悪化していることを示している。また、12月末時点の負債総額が、前年比10%増の87兆元へと膨らんでいる。前記の『人民網』によれば、16年の国有企業全体の営業収入は、1.7%増の45兆8978億元である。これに対して、12月末の債務総額は10%増の87兆元である。つまり、16年に7673億元の増益を実現するため、8兆円弱の債務増を招いた計算である。「債務漬け」の企業経営実態を余すところなく示している。こういう状態で『人民網』は、「国有企業、16年の経済運営状況は緩やかに好転」という現実と違ったニュアンスで報道しているのだ。苦し紛れか、経営の実態に無知なのか。そのいずれかであろう。

『ブルームバーグ』(1月26日付)は、「16年12月の工業利益、過去1年で最低の伸び、需要鈍化が響く」と題して、次のように報じた。

この記事でも、昨年12月の製造業の景況急悪化を伝えている。トランプ氏が米大統領に当選して、「ツイッター」での中国攻撃が景況感悪化を招いているのではないか。そういう指摘があることは、注目すべき点であろう。中国企業が萎縮し始めているのだ。

(3)「中国工業セクターの企業利益は昨年12月、価格上昇にもかかわらずここ1年で最低の伸びにとどまり、需要鈍化が景気拡大の重しとなる恐れがあることが浮き彫りとなった。国家統計局が発表した12月の工業利益は前年同月比2.3%増の8444億元(約13兆9100億円)。11月は14.5%増だった。16年全体の工業利益は前年比8.5%増の6兆8800億元。15年は2.3%減少していた」。

(4)「オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC、華僑銀行)の謝棟銘エコノミストは、『原材料価格は上昇しつつあるが、生産者はその分を消費者に転嫁できず、やや圧迫されている』と指摘。『景気の安定化が続けば利益が伸びる余地はなおあるものの、一段と保護色を強めているトランプ政権下の米国といった世界的な状況も不確実性につながっている』と述べた」。

12月の工業利益は前年比2.3%増だが、11月は14.5%増であるから、一転しての悪化である。理由は、トランプ氏の「ツイッター」による対中攻撃とされている。中国にとって対米輸出は全体の1位である。2015年は16.9%のシェア(14年=18.0%)だ。その米国で、「一つの中国論に縛られない」と言い出したトランプ氏が大統領に就任する。警戒論が強まるのは当然であろう。米中関係が悪化すれば、中国経済の息の根を止められかねない。こういう危機感が強まれば、17年の中国経済は、甚大な影響を受けるはずだ。
posted by beetle at 07:48| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする