2016年11月29日

トランプ次期大統領が頭を下げる盟友は安倍首相 債権国日本と債務国米国

夕刊フジ / 2016年11月28日 17時12分

 【お金は知っている】安倍晋三首相が先日、ニューヨークのドナルド・トランプ米次期大統領を訪ね、親交を深めた。まばゆい黄金の間で満面の笑みを浮かべる両氏。中国共産党系の環球時報と民進党の安住淳代表代行がそろって「朝貢外交」だと評した。トランプ氏は宗主国の王様、安倍首相は服属国代表という構図だと言いたいのだろうが、現実を倒錯させている。

 朝貢関係は、服属国からの貢ぎ物をはるかにしのぐ価値の物産を、王様が下げ渡すことで成り立つのだが、今の日米関係はそれどころではない。米国という国家は世界最大の借金帝国であり、外国からの資金が入ってこないとホワイトハウスの主は何もできない。対する日本は世界最大の債権国である。外に流れ出る日本の資金はドル資産となって直接、あるいは間接的に米国に流入する。日本発の資金のおかげで米国の金融主導経済は回る。

 債権国日本・債務国米国という組み合わせはこれまで注目されることはほとんどなかった。なぜかと言うと、米国はニューヨーク・ウォール街という巨大なマネー版ブラックホールを備えており、ワシントンの権力者が何も言わなくてもおのずと日本をはじめとする世界からカネを吸い込んできたからだ。

 グラフは米国に流入する外国からの資金の米国内総生産(GDP)比率と米企業全体の自己資本利益率(ROE、税引き後)の推移である。GDP比は米国の対外資金依存度を表す。企業の純資産(自己資本)を株主資産だとみなして、その収益性を算出したのがROEだ。ROEは外国の投資家にとっては対米投資の目安、ウォール街にとってはマネー吸引装置である。

 両者はリーマン・ショックが起きた2008年9月までは並行して急上昇したが、リーマン後は急激に下落して以来、回復の足取りは弱々しいまま現在に至る。肝心のROEは13年以降、低落傾向が続いている。米国の借金経済モデルは不調続きだ。

 そこで、異端児トランプ氏の登場だ。カネ、モノ、ヒトの移動を自由化するグローバリゼーションを通じて米企業の利益率ROEを高め、世界の資金を引き寄せようにも、ROEが上がらない。従来のやり方を踏襲しても何の展望は開けない。それこそが、トランプ氏への支持がウォール街の一部にも広がった背景だ。

 トランプ政策はこれまでの緊縮財政に代わる積極財政であり、柱は大幅な法人税減税と大型のインフラ投資である。債務国米国は政府主導でもっともっと借金しようとする。これまでよりもはるかに多い外国からの資金流入が必要だ。

 金融市場は早くもそれを折り込んで国債相場が下落し、金利が上昇している。外からカネが入らないと、金利はますます高騰し、債務負担が膨れる。ドル高が加速すれば米企業の競争力は下がり、ROEは押し下げられる。となると、トランプ政策は破綻する。トランプ氏が今、頭を下げてでもよい盟友は債権国日本の首脳のはずである。 (産経新聞特別記者・田村秀男)
posted by beetle at 10:53| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする